角川つばさ文庫の「はやぶさ・HAYABUSA」が増刷になりました。
昨年公開された、20世紀フォックス映画の「はやぶさ/HAYABUSA」に続いて、東映の「はやぶさ 遥かなる帰還」が公開された。
このあと、3月にも松竹の「はやぶさ」映画も予定されている。
私が角川つばさ文庫でノベライズしたのは、昨年公開された、20世紀フォックス映画の「はやぶさ/HAYABUSA」が原作である。
この話が私のところに来たとき、最初は困惑した。映画のノベライズという仕事は初めてだったし、なによりも、つばさ文庫向けに、どう料理すればいいのか、悩んだのだ。
つばさ文庫は、いわゆる児童向け文庫である。小学生が主体で、中学生も含む年齢層向けに、小惑星探査機の物語を、どう書けばいいのか、ノベライズである以上、勝手に自分の物語を書くわけには行かない、かと言って、大人向けの映画をそのまま小説にするわけにはいかない。
私は最初、JAXAの少年研究員。みたいな架空のポストを作って、主人公の少年をそこに置き、はやぶさのイトカワ着陸から、故障、ロスト、に至るまでのシーンに絡ませようと考えていた。
しかし、シナリオとラッシュフィルムを見て、私の考えていたようなキャラクターを挟める余地がないことを知った。
JAXAの全面立会いの下で、実在の相模原のキャンパスでロケを行った「はやぶさ」は、なんと言えばいいのだろう、まさしく再現ドキュメンタリーと言った方がいい、映画のつくりなのだ。
ここに、むりやり少年を押し込めば、それは、映画のノベライズではなくなってしまう。映画の持つ、あの愚直なまでの再現性に申し訳ないと思ったのだ。
この映画の中で、フィクションの人物は、竹内結子が演ずる主人公の「水沢恵」という人物だけで、それ以外は明確な特定のモデルが存在する。
水沢恵も、フィクションとはいえ、一人ではなく、複数の人物をモデルにしているので、まるっきりの想像上の人物というわけではない。
この映画の中で、子供が出てくるシーンは、水沢恵の幼少の頃の回想シーンと、相模原キャンパスで、相談員をやっていた恵のところにやってきて「ねえ、はやぶさくん、まだみつからないの?」と聞く、小学生のはやぶさマニアの少年だけなのだ。
私は、この小学生を主人公にしたらどうだろう? と考えた。
はやぶさプロジェクトの進行状況は、水沢恵お姉さんの視点で表現し、そして、はやぶさの冒険を、はらはらドキドキしながら見守る、小学生の視点を主にして描けば、はやぶさの7年に及ぶ旅路を、同じように7年の年月を掛けて成長していく物語が書けるのではないかと考えた。
このアイディアが頭に浮かんだとき、私のイメージの中に同時に浮かんだのは、内之浦から打ち上げられるはやぶさの姿だった。
幼稚園児の頃、内之浦でロケットの打ち上げを見たことのある少年が、相模原にある小学校に転校してきて、相模原キャンパスの展示室で水沢恵と出会い、そこで、自分が見たロケット打ち上げが、はやぶさの打ち上げだったことを知る。
そして、はやぶさが、何をしようとしているのかを、恵お姉さんから聞いて、はやぶさに関心を持つ。
物語の導入部はできた。しかし、書き出すには、足りないものが多すぎる。
主人公の少年が歩いた町、ロケットを見上げた場所。その情景、その空気。少年になりきるために絶対必要な「土地カン」が足りないのだ。
と、いうわけで、内之浦まで行って、主人公が見たであろう景色、歩いたであろう道を実際に歩き回ってきた。
内之浦は、南の国特有の緑の濃い森に覆われ、ぎわぎわぎわ、とセミの群れが鳴いている、そのところどころに白いパラボラアンテナがにょきっと生えており、どことなくスターウォーズのイメージだった。
そして、次は、相模原への取材である。
相模原キャンパスの展示室や、そこに置かれているもの、相模原の街並み、バスのルート、小学校の位置、主人公の少年が家族と暮らしているであろうマンションの位置。そこからキャンパスまでの道順、見えるもの。これをすべて取材してきた。
ペンシルロケットの実物を展示室で見たときは、感慨深いものがあった。
日本の宇宙開発は、ここから始まったのだ。
そして、主人公が夏休みに林間学校で「星空教室」を開くという設定の丹沢山の奥にあるロッジの取材も行った。
映画「はやぶさ」の持つ、泥臭いまでの再現性を、ノベライズするときにも忘れてはならないと私は思ったのだ。
私の書く「はやぶさ」の主人公は実在しない。しかし彼の生まれた町、育った町、ロケットも見た場所、そこから見える景色、クラスメイトと通学した道、遊びに行った相模原キャンパス、そして林間学校で見上げた星空。
これはすべて、実在する。私が、この目で見てきたものである。
おかげさまで、そのつばさ文庫版「はやぶさ/HAYABUSA」の重版が掛かった、今回で三版めである。
つばさ文庫は児童向けであるが、この本は、大人が読んでも読めるように書いたつもりである。もし、書店で見かけたら立ち読みでいいから、読んで欲しい。
そして、私の書いた「はやぶさ」の元になった映画が、DVDとなって3月7日に発売になるそいうだ。
映画館で映画を見逃がした方は、ぜひご覧になっていただきたい。
このあと、3月にも松竹の「はやぶさ」映画も予定されている。
私が角川つばさ文庫でノベライズしたのは、昨年公開された、20世紀フォックス映画の「はやぶさ/HAYABUSA」が原作である。
この話が私のところに来たとき、最初は困惑した。映画のノベライズという仕事は初めてだったし、なによりも、つばさ文庫向けに、どう料理すればいいのか、悩んだのだ。
つばさ文庫は、いわゆる児童向け文庫である。小学生が主体で、中学生も含む年齢層向けに、小惑星探査機の物語を、どう書けばいいのか、ノベライズである以上、勝手に自分の物語を書くわけには行かない、かと言って、大人向けの映画をそのまま小説にするわけにはいかない。
私は最初、JAXAの少年研究員。みたいな架空のポストを作って、主人公の少年をそこに置き、はやぶさのイトカワ着陸から、故障、ロスト、に至るまでのシーンに絡ませようと考えていた。
しかし、シナリオとラッシュフィルムを見て、私の考えていたようなキャラクターを挟める余地がないことを知った。
JAXAの全面立会いの下で、実在の相模原のキャンパスでロケを行った「はやぶさ」は、なんと言えばいいのだろう、まさしく再現ドキュメンタリーと言った方がいい、映画のつくりなのだ。
ここに、むりやり少年を押し込めば、それは、映画のノベライズではなくなってしまう。映画の持つ、あの愚直なまでの再現性に申し訳ないと思ったのだ。
この映画の中で、フィクションの人物は、竹内結子が演ずる主人公の「水沢恵」という人物だけで、それ以外は明確な特定のモデルが存在する。
水沢恵も、フィクションとはいえ、一人ではなく、複数の人物をモデルにしているので、まるっきりの想像上の人物というわけではない。
この映画の中で、子供が出てくるシーンは、水沢恵の幼少の頃の回想シーンと、相模原キャンパスで、相談員をやっていた恵のところにやってきて「ねえ、はやぶさくん、まだみつからないの?」と聞く、小学生のはやぶさマニアの少年だけなのだ。
私は、この小学生を主人公にしたらどうだろう? と考えた。
はやぶさプロジェクトの進行状況は、水沢恵お姉さんの視点で表現し、そして、はやぶさの冒険を、はらはらドキドキしながら見守る、小学生の視点を主にして描けば、はやぶさの7年に及ぶ旅路を、同じように7年の年月を掛けて成長していく物語が書けるのではないかと考えた。
このアイディアが頭に浮かんだとき、私のイメージの中に同時に浮かんだのは、内之浦から打ち上げられるはやぶさの姿だった。
幼稚園児の頃、内之浦でロケットの打ち上げを見たことのある少年が、相模原にある小学校に転校してきて、相模原キャンパスの展示室で水沢恵と出会い、そこで、自分が見たロケット打ち上げが、はやぶさの打ち上げだったことを知る。
そして、はやぶさが、何をしようとしているのかを、恵お姉さんから聞いて、はやぶさに関心を持つ。
物語の導入部はできた。しかし、書き出すには、足りないものが多すぎる。
主人公の少年が歩いた町、ロケットを見上げた場所。その情景、その空気。少年になりきるために絶対必要な「土地カン」が足りないのだ。
と、いうわけで、内之浦まで行って、主人公が見たであろう景色、歩いたであろう道を実際に歩き回ってきた。
内之浦は、南の国特有の緑の濃い森に覆われ、ぎわぎわぎわ、とセミの群れが鳴いている、そのところどころに白いパラボラアンテナがにょきっと生えており、どことなくスターウォーズのイメージだった。
そして、次は、相模原への取材である。
相模原キャンパスの展示室や、そこに置かれているもの、相模原の街並み、バスのルート、小学校の位置、主人公の少年が家族と暮らしているであろうマンションの位置。そこからキャンパスまでの道順、見えるもの。これをすべて取材してきた。
ペンシルロケットの実物を展示室で見たときは、感慨深いものがあった。
日本の宇宙開発は、ここから始まったのだ。
そして、主人公が夏休みに林間学校で「星空教室」を開くという設定の丹沢山の奥にあるロッジの取材も行った。
映画「はやぶさ」の持つ、泥臭いまでの再現性を、ノベライズするときにも忘れてはならないと私は思ったのだ。
私の書く「はやぶさ」の主人公は実在しない。しかし彼の生まれた町、育った町、ロケットも見た場所、そこから見える景色、クラスメイトと通学した道、遊びに行った相模原キャンパス、そして林間学校で見上げた星空。
これはすべて、実在する。私が、この目で見てきたものである。
おかげさまで、そのつばさ文庫版「はやぶさ/HAYABUSA」の重版が掛かった、今回で三版めである。
つばさ文庫は児童向けであるが、この本は、大人が読んでも読めるように書いたつもりである。もし、書店で見かけたら立ち読みでいいから、読んで欲しい。
そして、私の書いた「はやぶさ」の元になった映画が、DVDとなって3月7日に発売になるそいうだ。
映画館で映画を見逃がした方は、ぜひご覧になっていただきたい。
はやぶさ/HAYABUSA デラックスBOX〔初回生産限定〕 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- メディア: Blu-ray
2012-02-22 00:22