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コミック版「会長の切り札」2巻が発売されます。

 世間ではバレンタインデーとやらで、色々盛り上がっているようだが、54歳の越後湯沢のマンションにカンヅメ中の男性作家には無縁である。

 そもそもバレンタインデーが、今のような世間一般に認められるようになったのはいつ頃からなのだろう?
 少なくとも、私が小学生だった1960年代には、こんな風習は無かった。クラスの中にいる女子の間では「ねえねえばれんたいんでーって知ってる?」みたいな会話が交わされていたのだろうが、世間はどこ吹く風で、今のようにスーパーにチョコレート売り場が特設される、なんてことは皆無だった。

 私のようなダサい男子にとっては、実に平和で素晴らしい小学生時代だったのである。時代に感謝したい。

 バレンタインデーを取り巻く環境が一変したのは70年代に入ってからである。
 少女雑誌で特集され、それに、不二家が乗った。
 1971年に、ハートチョコが発売される。

 元々ハート型のチョコレートは昭和10年に発売されていたそうだが、現在流通している、あの平べったくてピーナッツが入っているタイプのものは、1971年の発売である。

 山下達郎の歌う「恋はハートで」のCMソングとともに、バレンタインデーの風習は一気に全国に広がり、チョコレートは女の子たちに恋の甘さを、そして非モテ男子には嫉妬の苦さを教えるようになったわけである。

 さて、私には、とんと縁のないバレンタインデーの話はこれくらいにして、今日は、明日書店に並ぶ

 「コミック版 会長の切り札・2」
 
 の話を書こうと思う。
 
 このコミック版会長の切り札は、ウェブ版の「ファミ通コミック・クリア」で連載されたものを単行本にまとめたものである。
 原作の「会長の切り札」は角川スニーカー文庫。コミックは「ファミ通」同じ角川グループであるが出版社が違う。
 
 私のところに話を持って来たのは、スニーカーの担当編集さんで、ファミ通の編集さんとは一度も話をしていない。

 まあ、編集さんとあまり話をしないまま、本が出ることは、よくあることなので、気にしていないが、今回のコミック化に関しては、「会長の切り札」が、すでに完結した物語であり、コンテンツとして確立しているので、物語の展開とか、そういった部分の打ち合わせは必要ない、と言うのが大きいだろう。
 
 つまり、今回のコミック化に関して、一番重要なのはスニーカー文庫の持っている「会長の切り札」というコンテンツを、ファミ通が使う。という部分であり、それに伴う出版社間での権利義務のすり合わせの部分が一番大変だったのではないかと思う。

 私としては「会長の切り札」はもう完結した物語であり、あの4冊について、何をどうしてくれ、などと言うことはできない。私の仕事は、あの4冊を書いたところで終わっているので、そのコンテンツをどうするかはご自由にどうぞ。と言うしかない。

 私が望んだのは、マンガ家さんがあの物語を読んで「面白い」と思ったのなら、その面白さを描いて欲しい。ということである。
 私の面白さではない、マンガにする人の面白さを優先して欲しいとお願いした。
 私のコンテンツで遊んでもらえれば、それが一番面白いはずである。

 私の交友関係は、実を言うとマンガ家さんの方が多い。
 私は今でも、マンガ同人グループ「作画グループ」の会員であり、かれこれ37年目である。
 
 「みなもと太郎」氏の仕事場にお邪魔して(まさしく邪魔だったと思う)当時、連載中だった「風雲児たち」のベタ塗りをしたり、関が原で戦う足軽を描いたりしていた。
 
 その頃、私もマンガを描いていた。
 そのマンガを読んでいただいたとき、みなもと太郎氏が、ため息をついて「あんた、物語はそこそこ面白いのね、でも、絵が決定的にダメだね。いっそのこと文章の方にお進みになれば?」とおっしゃられた。

 その言葉が、私を作家へと進ませたのだが、きっとみなもと先生は、覚えていらっしゃらないだろう【笑

 尊敬する人間の言葉は、人間の一生を決めることがある。というひとつのケースである。

  友人のマンガ家さんのなかには、原作つきの仕事をしている人もたくさんいる。コミック化の仕事をしている人もいる。

 そういう友人と話をしていると、必ず「原作者」に対する愚痴が出る。
 「イメージと違う」「こんな顔してない」「こんなシーンは書いてない」
 そういった原作者からのクレームが、編集を通じてやってくるらしい。

 マンガの面白さは、マンガという表現による面白さであり、原作の面白さに、さらにそこにマンガ家という表現者が加わることで、より面白くなるものでなければいけない。

 原作は、カタパルトであり、マンガというコンテンツをより面白く加速して射出するためにあると私は思う。

 原作者の、自分のコンテンツに対する「思い入れ」もわからないではないが、その辺の思い切りと言うか、すりあわせを自分の中できっちりつけないと、そのコンテンツは広がっていかないだろう。

 とにかく、私の周りにはマンガ家の友人も多い。アシスタントや編集をやっている人もゴロゴロいる。 
 マンガを語らせれば、ウザいくらいいろんなことを言うだろう。自分でマンガを描かなくなったマンガマニアほど、めんどくさいものは無いのである【笑

 だから、私は、今回のコミック化に関して、全権をファミ通の編集さんに渡した。
 「餅は餅屋」に任せたわけである。
 
 かといって、責任を逃れるつもりはない。原作者としての責任はすべて負う。あれは勝手に俺の知らないところで誰かがやったことだ。とは絶対に言うつもりはない。
 
 結果も何もかもすべてひっくるめて、私の責任である。
 
 というわけで、「コミック版 会長の切り札・2」をよろしくお願いする。
 コミック化していただいた「やとやにわ」さんには、ご苦労様&ありがとうございます、と言う言葉しか浮かばない。
 
 そして担当の編集さんには「コミック化しずらいコンテンツで申し訳ありません」と頭を下げたい。
 
 明日には書店に並ぶだろう。アマゾンで買うなら、下の広告をぽちっと押して欲しい。


会長の切り札(ジョーカー)(2) (ファミ通クリアコミックス)

会長の切り札(ジョーカー)(2) (ファミ通クリアコミックス)

  • 作者: やとやにわ
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2012/02/15
  • メディア: コミック



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