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「ちかてつそば」は地下鉄のそば

 角川書店の新年会の二次会は午後11時頃に終わる。それから湯沢まで戻るとなるとあわただしいので、都内の東陽町近くのビジネスホテルに宿を取った。
 
 なぜ、東陽町の近くに宿をとったかというと、地下鉄東西線の東陽町の駅の前には
「ちかてつそば」という立ち食いそばの店があり、一度行ってみたいと思っていたからである。

 私が鉄道マニアであることは先日の日記でお分かりだと思うが、実を言うと、私は駅にある立ち食いそばのマニアでもある。

 高校生の頃、消え行く蒸気機関車をカメラ抱えて追いかけていたが、貧乏な高校生にとって、駅弁などと言うものは、とても高くて手が出なかった。食事と言えば安くて、暖かい駅の立ち食いそばが専門だった。
 
 座席夜行で車中泊し、朝昼晩と駅の立ち食いそばを食って、浮いたお金でトライXを買って、キャノンFTbに装てんし、写真を撮りまくっていたわけである。

 今、関東のJR駅構内にある立ち食いそばのほとんどが、JR東日本の関連会社である「日本レストランエンタプライズ」という会社が経営しているチェーン店になっており、店ごとにちょっとした違いはあるものの、ほとんどが共通の食材を使用しており、基本的に同じ味になっている。
  
 安価で食事を提供するには、安定した食材の調達が必要であり、大規模な仕入れは欠かせないわけで、この画一化は、悪いことばかりではない。

 とはいえ、駅ごとに違う業者が入っていた頃のようにその味の違いを楽しむ、という楽しみがなくなってしまったのは寂しいかぎりである。

 変わった駅の立ち食いそばが食べたければ、都心を外れて少し郊外に行くか、もしくは私鉄系列の駅そばを食べるしかない。

 小田急には「箱根そば」 西武線には「狭山そば」 東急には「しぶそば」というこれまた各鉄道会社の関連企業の立ち食い蕎麦店がある。

 そして地下鉄にも、メトロフードサービスと言う関連会社が経営している「ちかてつそば」という立ち食いそば店があるのだ。

こうやって、鉄道会社が自分のところの系列企業で、駅関係のすべてをまとめてしまう様子を見ていると、「ターター」と「オットマン」の二大財閥によってすべてを支配された「椎名誠」氏の書かれた幻想SF「アド・バード」の世界のようになっていくのではないか? みたいな妄想が浮かぶのは、きっと私だけだろう【笑

 東陽町の「ちかてつそば」は、まさに地下鉄の駅の入り口のそばにあった。
 細長い店の入り口は二つ。食券を自動販売機で購入して注文するタイプの店である。

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 店内は狭く、カウンターが低い。最近の立ち食いそば店はカウンターが高く、どんぶりを置いて食べることができるが、この高さではそれはできない。どんぶりを手に持って食べる、という昭和っぽい食べ方をする店の作りだ。
 私が食べている間にも、客が来ては出て行く。
 
 別にグルメブログでもなんでもないので、味についてうんちくを言うつもりはない。
 派手な味でも、騒ぐような味でもない。
 高崎駅の鳥めしと同じ、立ち食いそばの王道を行く実直な味だった。

 そばを食べた後。上野に出て、特急草津3号に乗った。
 185系と呼ばれる、近距離用の特急電車である。

 私が乗ったのは、昭和56年に製造され、平成7年に内装を更新している車両だった。

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 この時代の車両だな、としみじみ思ったのは、窓が開くことである。
 ユニット窓になっていて、左右のレバーを指で押し下げてロックをはずし窓を押し上げるのであるが、おそらく今の子供は、この窓の開け方を知らないだろう。
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 完全空調になって、駅弁を窓から買い求めることもなくなって、鉄道車両の窓は開かないのが当たり前になってしまった。
 
 この185系電車がいつまで走るかわからないが、いつでも乗れると思っているとなかなか
乗る機会がなく。気がつくと廃止されている。ということがよくあるので、乗っておいて良かったと思う次第である。


 今日の本は、椎名誠 氏の書かれた幻想SF小説「アド・バード」です。
 これに続く「武装島田倉庫」や「水域」などの、異形進化を遂げた生物が跳梁跋扈する、文明のたそがれ行く世界を最初にこの世に送り出した小説です。
 その感覚は古くなるどころか、何度読み返しても新鮮です。
 
 
 
アド・バード (集英社文庫)

アド・バード (集英社文庫)

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1997/03/11
  • メディア: 文庫



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